scan-30 プライベート・ジャム・セッション

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#N.Y.ジャズ三昧No.7 /KATO
★内容「バードランド」の秋吉敏子
 夜になって、バードランドに行くためタクシーに乗りました。ブロードウエーと103rdストリートとの間付近というガイドブックを鵜呑みにして行ってみると、そこには陰も形もありません。交差点にいたポリスマンに尋ねると「それは、44thストリートで7thと8thアベニューの間にひっこした。」と教えてくれました。昨晩はバスで送ってもらったので、どのあたりだか気にしていなかったのです。それにしても、ガイドブックによって103rdとか105thと書いてあったり、これは、かのバードランドとは、まったく関係ないのかも知れませんね。

 何はともあれ、バードランドにやってきました。この日は、秋吉敏子・ビックバンドの出演です。「東京のホールで何度も聴いているけど、N.Y.で、間近に聴けるなんて、ついてるなあ。」何だか、よそいきでなく普段着の姿が見られる見たいな感じです。

 私は、 こういう所では新作ばかりやったりするのかと思っていたのですが、今までの作品を多く演奏しました。メンバーは昨年の来日の時とは入れ替わりがあるようです。私は、ルー・タバキンのプレーを期待していたのですが、そこに来てはいたようなのに、まったく演奏はしませんでした。やっぱり、何か調子が悪かったのでしょうか。それとも、来日講演の時は、大サービスをしているのでしょうか。

 昨年の東京でも演奏された、秋吉さんの幼少期のピアノの先生に捧げた曲がここでも演奏されました。中国から日本、そしてアメリカと彼女の音楽の広がりが東洋的な優しい旋律で展開されていきます。 いつも感じるのですが、秋吉さんの音楽には無理がないです。彼女の生活がそのまま音になったような気がします。

「プライベート・ジャムセッション」
 とうとう、N.Y.での最後の晩です。小林陽一氏のはからいにより、私たちツアーのメンバーは、彼の友人で黒人のダンサーの家のパーティーに行くことになりました。そのアパートは、ダンスの練習をするためかカーペットをしいた広間のような所でした。私たちは、そこに向かい合うように腰を下ろしました。

 パーティーというから、飲み食いをしながら話をしたりすると思っていたら、そこには数人のミュージシャンが来ていました。乾杯をして飲み始めたと思ったら、演奏が始まりました。N.Y.在住の黒人も日本人もいます。キャリアのある人も若手もいます。次から次へとバップの渦です。いつのまにかピアノトリオに、TP・AS・AS・BS・Gとヴォーカルまで入っていました。私はドラムの前の一角にあぐらをかいて、首を振る酒飲み人形となっていました。

 朦朧とした記憶をたどってみると、 なぜかモンクの曲が多かったようです。東京にいるときにライブなどでモンクの曲を聴いても、何だかちょっとしっくりこなかったのに、ここでは、とてもモンクのサウンドが自然に聴こえます。黒人の教会のミサにでもいった感じとでも言うか、自分たちの歌を自分たちで歌っているような感じがしました。
 しかし、パーカーのリフや歌物を聴くと、私も楽器を持っていたら、「ここで斬られても、『せめて、一太刀!』浴びせてから死にたいなどと野心を感じるのでした。