これは、1994年1月から1995年3月まで東視協会報『こだま』に掲載したものです。

東視協のひろば
会報『こだま』

 MS-DOSを音声化したパソコンを視覚障害者が利用するための入門書として書きました。いささか歴史的文書になってしまった感はありますが、視覚障害者の間では、MS-DOSは、まだまだ便利に使われています。


#パソコンを利用してもっと便利に
 私達視覚傷害者の不自由は移動と読み書きといわれています。私達はこの不自由をまず自分の努力によって克服しようとがんばります。しかし自分の努力だけではどうにもならない事もあります。そこではじめて他人や公に援助や協力を求める事になります。東視協の活動はこの個人でどうにもならない事に対して重要な活動をしているといえます。点字ブロックや音響信号で歩行は、点字の通知や書名で文字は・・・のように私達の困難は克服されつつあります。しかしまだまだ私達の困難は目の前に立ちはだかっています。できる事なら独力でなにもかもやりたいというのが偽らざる気持ちではないでしょうか。そこで登場するのがパソコンです。コンビュータ・アレルギーと自称する人も是非読んで頂きたいと思っています。

 パソコンといえばワープロとしてすでに利用されている方も多いとおもいます。おそらく私などより以前から慣れ親しんでいる方もいるでしょう。視覚障害者の中にはプログラマーもいるのですからここで私のような者がとやかくいう事ではないのでしょうが、ここで強調したいのは専門家やマニアになれという事ではないのです。白杖をつき点字タイプをうち、電話をかけ、テープレコーダを使うと同じ意味でパソコンを自由に使おうという事なのです。
 ではパソコンには何ができるのでしょう。何でもできるとはいえませんが、思ったよりいろいろな事ができます。つまり結構目の替わりになるのです。ペンの替わりから情報収拾やコミュニケーションの手段など工夫しだいです。晴眼者にとってはパソコンハ会社で事務をするための機械でいいのですが、私達にとっては白杖や点字磐と同様に補装具になるべき物なのです。特定の人の持物でなく視覚障害者の必需品というようになるにはもっとわれわれ自身がパソコンの価値を理解する必要があります。

 私がパソコンを始めたのは数年前の事です。以前から興味はあったのですが、なにしろ高価だという事もあって手がでなかったのです。当時は基本的なセットで60万円異常もしていたのですから。ともかく私は虎の子(40万円プラスアルファ)をはたいて一番安上がりなパソコンと音声ワープロシステムを買いました。
 音声装置の音になれれば簡単に墨字の原稿が書けるようになりました。とはいっても小学校以来漢字から離れていたので正しく漢字を使う事には苦労しました。(今も漢字には悩まされていますが)
 いくらかワープロがうてるようになると欲が出てきます。そもそもこんな高い物を墨字を書くだけに使っててはもったいない。パソコンをいろいろに利用して元をとってやろうと思いました。その結果宝の山のような多くのソフトウェアに出会うとともにハードウェアに金をかけてしまうというミイラ取りがミイラになったような事になったのですが・・・。ともかく私の試行錯誤による経験をいくらかでも皆さんにおわけしたいと思います。

 因みに私のパソコンにはいろいろな端末が接続されていて、いろいろな仕事をしてくれます。
 音声装置:画面を合成音で発声する。
 墨字プリンタ:墨字を印刷する。
 点字プリンタ:点字を印刷する。
 電子ブックプレーヤ:8cmCDに入った辞書などを読み取る。
 モデム:電話回線に接続してパソコン通信をする。
 MIDIインターフェイス:シンセサイザーに接続して音楽を演奏する。

 はっきりいってちょっとやりすぎなんです。でも私にとってはあると便利、今やないと不便になってしまいました。

 ここでみなさんに提案があるのですが、みなさんの抱えているパソコン利用に伴ういろいろな問題を話し合ったり勉強したりする集まりを持ったらいかがでしょう。私も些かながら経験の蓄積もありますし、東視協の中でも専門的な知識をお持ちの方も多いと思います。なるべく初心者から集まって簡単な事から始めたいと思います。


#安上がりにパソコンを始める
 今回はパソコンを買って始めるには概ねいくらぐらいの予算が必要かに付いてです。中古や店頭処分品ならもっと安くなるでしょうが、ざっと30万弱です。AOKワープロとして揃えるなら45万弱という所でしょうか。
 ここではAOKに拘らず安く多様性のあるシステムを考えます。
パソコン NEC PC9801BX2/U2 12万円程度
ディスプレーと墨字プリンタ 各3〜4万円程度ですから8万円もあればいいでしょう。
音声装置 富士通 FM-VS101 6万円程度
基本ソフト MS-DOS 9800円
音声かそふと VDM100 3万円
漢字変換ソフト ATOK7 7500円程度
 ここまでは何が何でも買わなければなりません。そして後はフリーウェアという無料で提供されているソフトを使います。全てのソフトウェアには著作権がありますが、”一太郎”のように使用料を支払う意味で売られている物と”base”のように使用配布が自由なフリーウェアがあります。どうせただじゃたいした事はないと思っている方もあるでしょうが、金儲け抜きでこつこつ作られているので使いやすく特に音声化するのに都合がいい物が多いようです。
DM.EXE エディタ(テキストを作る→文字をかく道具)
BRAILLE.SYS (点字キーボード・エミュレータ→キーボードを点字タイプのようにする。)
XTR.EXE (テキストフォーマッタ→テキストの整形と印刷)
 これだけあれば6点入力でワープロが実現します。


#パソコンは文書を読む道具
 視覚障害者の大半が墨字を書きたいという事で音声ワープロを手にします。それではワープロやエディタは字を書くための者だけかというと、これが字を読む道具になるのです。ここでいう文字とはフロッピーディスクに書かれた文字です。つまり電子データという事になりますが、それは他人が書いたワープロの文書だけではありません。CD−ROMやパソコン通信には普通活字になっているような情報がいっぱい入っています。
 パソコンは晴眼者にこちらの言葉を伝えるだけでなく、情報を入手する道具になるのです。私達視覚障害者は情報障害者なのですからこれを少しでも克服したいと思っています。という事で取り合えずこの手段の第一歩は音声ワープロやエディタを使いこなせるようになる事です。
 墨字の書類や資料が読みたい時、見える人に読んで貰うのがスタンダードなやり方です。そして点訳して貰えればなによりです。しかし最近はどこにもワープロがあって子供も主婦も結構使いこなしています。私は時々妹に「この紙の内用をワープロで打っといて」とフロッピーをわたして、後日エディタで読み上げさせています。こうしておくと人名や知名などの漢字が確認できてまたそれに関連した文書を書く時に役に立ちます。
 CD−ROMは新しい時代の出版物です。広辞苑などの辞書から旅行や料理のガイド、本やCD(音楽)の目録まで自分の手元において一人で調べる事ができます。私は電子ブックという8センチCD−ROMを使っていますが、原稿を書いていて言葉の意味や漢字が判らなくなるとこの国語事典を検索します。
 パソコン通信は草の根ネットのような個人的集まりもありますが、何といっても付加価値通信網といわれる大手ネットワークです。電話線から情報を買うのです。通信社新聞社のニュースはもとよりコンサートやイベントのガイドなど目が見えればあたりまえに飛び込んでくる情報がここにはあります。私はPC−VANに入っていますが、あらかじめ見たい情報をリストアップしておき接続時間を短縮するようにしていますので、お金が莫大にかかるような経験はまだありません。


#パソコンを始めるに当たっての障害
 「パソコンやって見ようと思うんだけど難しいでしょう。」という声をよく聴きます。今回は何が私達のパソコン利用に障害になっているかを考えて見ましょう。
 まずは金銭でしょうか。ここ1年の間にパソコンの価格が大いに下がりましたが、概ね数十万円といったら端金とはいえません。ではその数十万円をどこから持ってくるかです。私は貯蓄を崩す事でクリアしましたが、おそらく皆さんの中にもそういう方がいらっしゃるでしょう。私のパソコンに対する障害はこの高い買物への抵抗が一番でした。
 「音声ワープロとして用いるためなら本来障害を克服する補装具や日常生活用具として給付されてしかるべきだ。」と今でも思っています。日常生活用具としては障害者センターで共同利用するようになっているようですが、読み書きの不自由の前に移動の不自由を思ったら十分活用はできません。時計やテープレコーダ並にならなければ本来の意味をなしません。
 昨年の全視協大会の分科会で聴いたのですが、神奈川では弱視の拡大読書機に対して全盲に音声機器と音声化ソフトを給付する制度が実現しているそうです。神奈川の制度を東京を始めとして全国で実現させたい物です。

 次は用語でしょうか。パソコンに関する用語は日常では耳にしない物が多いようです。私もこれにはとまどい後から考えると「何であんなつまらない事を尋ねたのだろうか」と赤面したくなるような事があります。鍼灸には鍼灸の、音楽には音楽の、野球には野球の専門用語とか業界用語とかがあります。コンピュータにはコンピュータの用語があり、こいつは外国から来たので横文字しか判らないのです。

 そしてキーボードでしょうか。コンピュータには100個ものキーがあります。できる事ならフルキーのポジションを憶えた方がいいですが、点字タイプ式に6点入力でも問題はありません。先日行ったパソコン勉強会でも全くの初心者の熊谷さんも橋本さんも6点入力で自分の名前をすぐに漢字で書いていました。


#漢字について
 日本語は漢字を組み合わせた熟語により組み立てられていますが、点字のみの生活を長くしていると言葉の意味は概ね理解しているが、使われている漢字については曖昧にしか解っていない事が多いと思います。実際に書いたり読んだりする事なしに漢字を身に付けるというのはむずかしい事だと思います。パソコンを使って漢字かな混じりの文章が書けるようになったといっても漢字の選択は自分が行わなければなりません。パソコンを手にしたらソフトの使用法を憶える事とともに漢字の勉強もしなければならなくなります。
 長谷川先生が考案された六点漢字は視覚障害者が漢字の文かに加わる事を可能にしたすばらしい発明です。そしてそれはAOKワープロにより真価を発揮する事ができました。そしてその後各種の音声化ソフトにより漢字の詳細読みができるようになり、六点漢字を知らなくても漢字の判別が可能になってきました。しかし漢字の使用法について知識と判断を要する事については変わりません。
 私は地道な性格ではないので六点漢字は全く勉強していません。詳細読みを聴きながら漢字を選択してもどうにか文書は書けますが、字が判らない事はしばしばです。私はそういう場合パソコンから検索できる辞書を引くのです。私のシステムからは電子ブックで三省堂の国語事典とひかりの事典で清水書院の国語事典を使う事ができます。これは少しパソコンの操作に慣れる必要がありますが、人の手を借りずに辞書が引けるのは世界が変わります。人名や医学用語などはかなと漢字を対応させたファイルを作っておくのも便利な方法です。最近の日本語FEP(漢字に変換するソフト)は辞書が充実してきましたからなるべく頭のいいソフトを利用するのも漢字が苦手な人には救いです。
 ともかく漢字を身に付けたいと思ったらどんどんワープロで書いて身近な晴眼者に見て貰う事だと思います。そして間違いを指摘し、正しい字を教えて貰うのです。その際どういう字といっても形では判りませんから、音訓と使われる熟語を聴くのです。部首や画数も聴いておくと[ワープロ漢字事典]などで検索する手がかりになります。岡村晴朗さんの著書[点字使用者のための漢字用例集]なども参考にされるとよいと思います。


#あなたはビルのオーナー
 今回は少し見方を替えてハードとソフトについて例えを引いてお話しします。
 パソコンを手に入れたという事は1軒の建物の持主になったような者です。部屋の中はがらんどうで電気や水道がきているだけです。この殺風景な室内に設備をして人を入れればどんな仕事も始められます。喫茶店でも事務所でも劇場でもこのスペースは工夫しだいです。(設備や人は、端末装置やソフトウェアといえます。)
 それではここで小さなホールを始めましょう。ホールといえば舞台に照明そして客席が必要です。(電灯や椅子は人を入れて何かしようとしたら絶対いります。それはディスプレイやプリンタと同じです。)ここで注目してほしいのは舞台です。舞台がなければ演劇も音楽も演ずる事はできません。
 MS−DOSはステージなのです。舞台の広さは640kb(キロバイト)、そこには大道具も小道具もあります。そこに[一太郎]がきてワープロという出し物を行います。また[ブレイルスター]劇団は点字文書作製という出し物です。そして[ミュータ君(MIMPI)]のグループはここで音楽の演奏をします。(ここでいう劇団やグループがそれぞれ役割を持ったソフトウェアなのです。)
 MS−DOSのコマンドとは!MS−DOSでコマンドといいますが、これは舞台に専属の従業員みたいな者です。出し物の間はじっとしていますが、その前後には舞台の細々した用事をしてくれます。(ファイルのコピーや削除、フォーマットやバックアップなど)
 デバイスドライバって何?照明や音響装置があってもそれを操作する人がいないと使う事ができません。プリンタやマウスをコンピュータに取り付けてもそれを動かすためのプログラムつまりデバイスドライバが必要なのです。そしてその事は台本に書いておかないとやってくれません。その台本とは[CONFIG.SYS]や(AUTOEXEC.BAT)というファイルなのです。
 業者によってインストールされたソフトしか使った事のない人の中には、この舞台や裏方の存在に気付かない方も多いと思います。しかしあなたのお持ちの物件(パソコンですよ)を十分活用するにはこの事を理解する必要があります。


#パソコンの音声化
 私達視覚障害者の間ではパソコンがしゃべるというのが基本になっています。今回は音声化とそれに関わるソフトやハードについてです。

 音声化の方法には大きく二通りあります。
 一つはアプリケーションソフトその物が視覚障害者用に音声化プログラムを含んでいる物です。(AOKワープロ・NRCD−PEN・ブレイルスター・BASE等)これは最も我々向きです。どのソフトも音声をたよりに操作するために必要な事はしゃべってくれますし、入力方法も点字タイプ式にできます。ハードウェアとしてはパソコンと音声装置さえあればとりあえず使えます。しかし難をいえば種類が少なく、AOKのサブセットに住所管理や通信ソフトもあるようですが、ほとんどワープロか点字エディタに限られてしまいます。

 もう一つは音声化ソフトを起動させ、その上で目的とするソフトを使う事です。(VDM100で音声化して一太郎を使う等)こちらはややマニアックな方法かも知れませんが、ワープロ以外にパソコンを活用する事や世間一般に出回っているソフトを利用する事も可能にしてくれます。発展性がある代りに手数がかかるといえます。VDM100や山彦がこの音声化ソフトに当たりますが、プログラムサイズが大きいのでハードディスクや拡張メモリが必要です。
 このような環境で使うソフトには何通りかあり、使い勝手の点で様々です。一つは完璧に声をたよりに使える物。もう一つは音声化ソフトの画面読み機能を駆使すれば表示を確認して利用が可能な物です。最後は箸にも棒にもかからないグラフィックを多用したソフトで音声化に適さない物です。

 いずれにしても使いなれたソフトを十分活用する事です。しかし用途によって様々なソフトを使い分ける事もできればもっと便利になります。フリーウェアの中には音声化ソフトで利用しやすい物が多くあります。みなさんも何かトライして見てはいかがでしょうか。


#電子ブックの検索
 今回は会員の方でソニーのデータディスクマンを使って電子ブックを読みたいというご相談を受けましたので、これをテーマに取り上げて見ましょう。
 電子ブックとは小型のCD−romの事で、データディスクマンはパソコンに接続して使用できる事からこれは音声で読める新しい形態の書籍です。タイトルも豊富で広辞苑・最新医学大事典をはじめとする各種辞典から、書籍・CD・薬剤・料理・観光など各種ガイドブックやデータベースがそろっています。これがあれば点訳しきれないような膨大な情報をパソコンを使って独力で調べる事ができます。
 パソコンにデータディスクマンを接続して、VDM100の上でただ短に電子ブック検索ソフトのDR1.EXEをたち上げただけでは何にも声は出てきません。データディスクマンを音声環境で使うにはVDM100の画面読み操作を理解していないとできません。BOOK.BATは電子ブックのためにVDM100のお膳立てをするバッチファイルです。またDR1.EXEはローマ字かな変換になっていますので、BRAILLE.SYSはNABCCモードで使用した方が使いやすいと思います。
 ではディスクマンを買うと付いてくるおまけの電子ブックを検索してみましょう。プロンプトが出ている状態で[book]と打ってリターンします。しばらくすると「○○辞典・・・」のように発声されます。上下にカーソルを移動すると次々にいろいろな辞書の名前が出てきますからファンクション5かリターンキーで決定します。ここでは上から2番目の「三省堂現代国語辞典・外来語辞典」を選択します。
 しばらくすると「単語検索・・・」と発声されます。検索方法には辞書によっていろいろありますが、ここでは「単語検索前方一致」と「単語検索後方一致」そして「メニュー検索」があります。これも上下にカーソルを移動して決定します。ここでは前方一致で検索します。(前方一致とは頭に○○という言葉がある物を検索する事です。反対にお尻に○○が付く言葉を知りたいときは後方一致を使います。)
 さていよいよ検索語の入力です。画面右下部(ファンクション10)の位置に「かな」と表示されています。ファンクション10では検索文字をひらがな・カタカナ・半角英数字の3種類で検索することを決めます。日本語は主にひらがなですが、外来語はカタカナで、英和辞典は英数字で入力する必要があります。「かな」と出ているのはこれから入力するアルファベットがローマ字変換されてひらがなになるという事です。ではここで「inu」と打ってみましょう。グラフィックキーと「j」(jは右人さし指です。)この操作はVDM100でカーソル行を読ませることです。「いぬ」といったらうまく入力できたのです。そこでファンクション5かリターンキーで検索が始まります。
 「検索中!」といってしばらくすると「・・・」と頭に{いぬ}が付いている検索結果が出てきます。上下カーソルで選択してリターンキーを押し内容を見る事にします。ここでもほとんど何もいわないかも知れません。そこでVDM100の画面読み機能のグラフィックキーとカンマで読み上げさせます。またグラフィックキーとリターンキーで画面を一時的に凍結してカーソルキーを使って細かく読む事もできます。私はクイックレビューモードを使いテンキーをカーソルのようにして読んでいます。これが一番能率がいいのですが、braille.sysとの併用はできませんので、キャプスきーを解除しておく必要があります。
 このようにして辞書の検索ができますが、この結果をテキストファイルとしてフロッピーディスクに保存する事ができます。ファンクション6を押すと「半角」といいます。ファイル名を付けてリターンキーを押すと保存されます。個人的に利用するならこのファイルは煮るなり焼くなりあなたの勝手です。
 電子ブックの価格は数千円から1万円程度で比較的手に入れやすい情報源だと思います。ワープロで文書を書くだけでは一方通行です。電子データも私達に手の届く書物として大いに利用したいものです。


#年賀状を書こう
 今回はいよいよ年の暮れにも当たりますのでワープロを使って年賀状を書く事にしましょう。

 ところでこの年賀状などに使われる完成はがきが結構曲者なのです。晴眼者は手書きでもウインドウズのソフトを使ってでもはがきの大きさに合わせて字種や大きさを自由自在に選ぶ事ができます。全盲者にとってはどんなに世の中が進んでも見た目の美しさを判別する事は不可能かと思われます。とりあえずできる範囲の工夫を試みて見ましょう。

 私は普段はワープロは使わずエディタでもっぱら文章を書いています。しかしはがきの時はワープロの方がレイアウトをその都度確認できていいようです。書式設定ではがきのフォーマットができているワープロもありますが、場合によっては自分で設定しなければならない物もあります。A6サイズがはがきに当たるのですが、フリーサイズで指定するなら148かける101ミリのようにするといいでしょう。20行かける40桁(全角で横に20文字)ほど書く事ができると思います。

 それでは実際に書いて見ましょう。「明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。」・・・などです。これに何年元旦とか住所氏名などをかきますが、これでは数行で終です。漠然と書いたのでははがきの上の方にこちょこちょと書かれただけになってしまいます。
 それでは見栄えのする手紙にするテクニックを上げてみましょう。
1:句切りのいい文節で改行してセンタリングする。
2:「賀正」などの文字は倍角や4倍角にして目立たせる。
3:均等割り付けをしてもおもしろいが文字間にスペースを入れて広がりを持たせる。
4:倍角で書いた行の後1行改行してゆったり見せる。
5:文字を大きくしたら網掛などの文字飾りを試みる。
6:空白を利用して相手に対するコメントをつけ加える。
 これはほんの一部ですが、工夫しだいで見栄えをよくする事はできると思います。ためしにいろいろ作ってみて身近な晴眼者にアドバイスを受ける事です。

 それでは皆さん良い新年をお迎え下さい。


#パソコン通信
 「パソコン通信」と聴いて人によって「パソ通=遊び」とも「パソ通=ビジネス」とも受け取られることがあると思います。それでは「電話・手紙・新聞・雑誌・図書館・サークル・研究会」と聴いて遊びか仕事かと色分けすることができるでしょうか。パソコン通信にはこれらの要素がみんなつまっているのです。
パソコン通信をするにはパソコンのほかに電話回線とモデムそして通信ソフトが必要です。モデムとは電話のアナログ信号とパソコンのデジタル信号を通訳する機械です。通信ソフトは「WTERM」が有名ですが、大手ネットのみにアクセスするなら「STOP」をお奨めします。

 草の根ネットと大手商用ネット:草の根ネットとは個人や小グループあるいはパソコンショップなどで独自のホストコンピュータと回線で運営されている物で、仲間の文通や掲示板的な要素が強いと思います。大手商用ネットとはPC−VANやNIFTYのような物で情報を無料あるいは有料で流してくれる物ですが、SIGとかフォーラムという目的別にメンバーに開放されたコーナーがたくさんあります。

 それでは少し利用例をご紹介しましょう。
 電子メール:パソコン通信をしている人から個人的に手紙が届いているかを確かめます。そしてその返事をエディタで書いて相手に送信します。
 SIG(スペシャル・インタレスてぃんぐ・グループ):私は主に音楽やパソコン関係あるいはハンディキャップのグループの掲示板の書き込みを見ます。そして時には自分の意見やレポートを書きます。
 OSL(オンライン・ソフト・ライブラリー)からフリーソフトの入手をします。これなら作者にフロッピーを送って送り返して貰うなどという手間がかかりません。
 付加価値情報の入手:新聞記事やニュースを読む。ちなみに情報アラカルトのコンサートや演劇の情報の中には「ピア」からオンラインで入手している物もあります。

 このようにパソコン通信は情報障害者ともいうべき視覚障害者にとって手を拱いているような余地のない情報源なのです。通信方法を工夫すれば出費を押さえることもできますが、傷害の保証という意味からは接続料の補助なども考えていきたいものです。


#とりあえず保存して終了です。
 パソコンの価格がますます安くなり、スタンダードな98がとうとう低下で10万円を切りました。周辺機器やソフトウェアにはある程度お金をかけた方がいいですが、パソコンは安ければ安いほどいいのです。

 ハードディスクについて:このコーナーで紹介してきたような一連の作業を効率よく行うためにはハードディスクという大容量の記憶媒体が必要になります。フロッピーディスクを文書データでいっぱいにするには、並大抵の事ではありません。しかしワープロソフトや音声かソフトは図体が大きくてフロッピーには収まりきれなくなります。またいちいちフロッピーを入れ替えて立ち上げなおしていては作業が円滑にはいきません。例えば文章を書いていて辞書をひくとか、パソコン通信のメールを読んで返事を書くなどです。ハードディスクに全てのソフトを納めておくと大変便利ですが、大きな倉庫を管理するような意味で整理整頓する技術が必要にもなります。

 拡張メモリについて:パソコンが普通に使える舞台の広さは640kbです。これでは音声かソフトを乗せるといっぱいになってしまいます。そこで舞台の脇にやぐらをくんでそこに上がって貰います。これが拡張メモリの原理です。舞台が広く使えていろいろなソフトが動き回る事ができるようになるのです。

 セットアップ・インストールについて:全くの初心者で視力がないと配達されたパソコンやソフトを使えるようにするのは、困難だと思います。そういう点では視覚障害者向けの営業をしている会社から全てを購入する事が一番容易な方法です。身近な視覚障害者の先輩ユーザーに尋ねるのもいいでしょう。

 最後に:1年余り私の駄文におつきあい頂ありがとうございました。晴眼者にとってのパソコンは絵を見てマウスでそうさすると字も絵も音楽も出てくるような時代になりました。しかし視覚障害者には音声を便りにキーを操作する方法しかありません。このノウハウを身につける事でも世界が広がる事は確かです。今後はこの技術の指導を学校や施設でしっかり身につけさせてくれる事が必要です。パソコンをはじめとするハイテクが障害者に与えるメリットとデメリットを見定めて改善を求める事も大切です。


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